16年12月に新しい会社法制に関する要網案が取りまとめられ、今年3月に国会提出、18年4月から施行の見込みです。その中で商法の抜本改正が行われ、従来の規制が廃止されたことにより、一つのビジネスチャンスが生まれるかもしれません。経営者として、これらに対応すべきポイントを紹介します。 |
1.有限会社を廃止、株式会社に一本化 | ||||||||||||
従来の有限会社制度が廃止され、株式会社に統合されます。勿論現在存在する有限会社については、引き続き従来通りの取扱いとなる経過措置が設けられます。これは、次に説明する最低資本金制度の撤廃により、株主有限責任の会社類型を一つの会社類型として統合するものと考えられます。 現在の有限会社の経営者としては、株式会社への組織変更について検討する必要があります。対外的なイメージは株式会社の方が信用度は高いと思いますが、現在の有限会社では、 (1)取締役、監査役の任期規制が無く、 (2)決算公告も課せられていないので実務的なメリットがあります。
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2.最低資本金制度の撤廃 | ||||||||||||
現在は最低資本金制度があり、有限会社300万円、株式会社1000万円となっています。これが撤廃 され、1円株式会社の設立も出来るようになります。現在でも新事業創出促進法により1円株式会社の設立は可能ですが、5年以内に資本金1000万円に増資しないといけないし、産経省へ届出が必要なため繁雑でした。この最低資本金制度は債権者等の保護のため設けられた制度ではありますが、新事業の創出にあたって大きな障害になっていたため撤廃されるものと考えられます。 経営者としては、これまで個人で行ってきた事業を会社にする好機です。また会社の中の事業を別の法人で行わせることも容易に出来るようになります。これからの事業展開を検討する必要があるでしょう。このようなことから、株式会社の設立が飛躍的に増加すると考えられています。
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3.機関設計の多様化 | ||||||||||||
同族会社では、株主であるオーナー自らが取締役として経営に当たることが多いため、そのような会社 では、取締役会は機能していないため設置は任意となります。会社の機関(取締役会、監査役、監査役会、会計参与、会計監査人等)について柔軟に設計できるようになり、一定の原則のもとで各機関を任意に設置できるようになります。 ※1.取締役の人数は1人でよい。 経営者としては従来の組織を見直す良い機会であり、人数規制との関係で取締役としていた人を外すことも可能となります。 |
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4.会計参与 | ||||||||||||
会計参与という会社の機関が新設されます。会計参与は株式会社の計算書類を作成する会社の機関 であり、設置は任意ですが会計専門家でなければならないため、対外的に会社の計算書類の信頼性を向上させたり、また、中規模の会社で実質的な財務担当取締役の職務を行ったりすることが可能であると考えられます。
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5.その他 | ||||||||||||
計算関係の改正は多数ありますが、経営に関する影響が大きいのは次の点と考えられます。 (1)株主持分変動計算書の作成 従来の利益処分案規定は廃止され、これまでその中で決議されてきた項目はそれぞれについ て決議を経ることになります。そして利益処分計算書に変わって株主持分変動計算書の作成が求められます。 (2)役員賞与は費用へ 役員賞与はこれまでは利益処分として株主総会の決議により定められてきました。株主総会決議はこれまで通り必要なのですが、それが利益処分としては行われなくなります。このため役員賞与は会社の費用として処理するしかなくなると考えられています。利益の処分ではなくなるため経営者としては、少し考え方を変える必要があるかもしれません。 |