今回のテーマは、生前贈与です。生前贈与の方法として「相続時精算課税制度」というものがあり、贈与税の申告のうち約20%を占めています。会社経営者等にとって、事業承継対策は一つの大きなテーマですが、この制度は事業承継対策として注目されています。生前贈与の効果的な活用について御紹介します。
|
相続時精算課税制度
|
贈与税の課税制度には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、平成15年1月1日以後に財産の贈与を受けた人は、一定の要件に該当する場合には、相続時精算課税を選択することができます。この制度は、贈与時に贈与財産に対する贈与税を納め、その贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めたその贈与税相当額を控除することにより贈与税・相続税を通じた納税を行うものです。
1)
この制度の最大のポイントは、相続の時、生前に贈与した財産の価額は、相続時の価額ではなく、贈与時の価額で評価するということです。つまり、将来価値の増加する資産を贈与することが望ましいということです。価値の減少するものですと、相続の時に価額は以前の高いものを使うことになってしまいます。
具体的に資産別にみると次のようになるでしょう。
土 地
|
◎物件として、値上がりが見込まれるものは、生前に贈与した方が有利です。
◎この制度の適用資産は、小規模宅地等の減額特例となりませんので対象から除きます。 |
株 式
|
◎自社株について後継者の株式等が少ないときは、この制度を利用することにより贈与税の負担は軽くなります。業績が安定していて自社株の価値が毎年増加していくような場合、又は株価が数年後に大幅に上昇するような場合には効果があります。 |
預 金
|
◎低金利のため、運用しても多くの増加は望めません。 |
|
2)
特定の贈与者ごとに選択できますので、暦年課税の110万円の非課税枠を効果的に利用できます。
3)
特定の相続人に相続させたい財産については、相続時精算課税制度で生前贈与しておけば、遺言書を残す必要はありません。
|
居住用財産の配偶者への贈与
|
婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産を配偶者に贈与した時は、2,000万円の控除が 受けられます。贈与の翌年の3月15日までに居住の用に供し、以後も引き続き居住の用に供する場合に認められ、同一の配偶者に対して1回だけ利用できる大変有利な制度です。
|
住宅取得資金の贈与の特例(17.12.31迄)
|
自己の居住用の住宅等を取得するための資金を父母等から贈与を受けたときは、住宅取得資金の贈与の特例があり、550万円までが無税となります。贈与を受けた住宅取得資金のうち1,500万円までについては、いわゆる5分5乗方式(5年分の基礎控除を先取りして計算する方式)により贈与税額を計算します。
|
非課税枠110万円内での贈与 |
毎年110万円の範囲内で、配偶者や子供に贈与していきます。
これは、相続税額があまり多くない場合には効果的な方法です。できるだけ受贈者を多くすると効率的です。
|